3.5〜50MHzAM/CW送信機の製作
(MAFTX-350A)

【このページの最終更新日:2010年9月11日】

3.5MHz〜50MHzのAM/CW 10W送信機です。 なんの変哲もないオーソドックスな送信機です。

送信周波数 3.5/7/14/21/28/50MHz
送信モード AM/CW
送信出力 10W
終段管 6146
変調方式 6BQ5プッシュプルによるプレート・スクリーン同時変調


幸いな事に以前にケース欲しさでオークションで入手したトリオの送信機TX-88Dの残骸が3台分もありましたので、迷わず高周波回路部分はしっかりと活用させてもらう事にしました。
ケースは、やはり懐かしいリードのAS-1を無条件に選択しました。




「まずは姿ありき」プロジェクトに従い、中身はほとんど空っぽだが外観は完成した当機です。 
力強く電波を発射してくれそうな雰囲気が一杯!




外観ができたところで回路図を完成させました。  3セット分あるトリオTX-88Dの解体部品を使う関係で、同機の回路がベースになっています。 実際50MHzまでカバーしたAM送信機としては、TX-88Dは正に完成された回路を持っていると思います。 3.5MHzと50MHzでは原発振周波数自体も逓倍数も異なりますが、そのレベル差を考えると大変難しいものがあります。 これは同機のラインのVFO-1を含めて実にうまく必要なRFレベルを確保する様設計されていて(VFO-1は3.5MHzでは出力2.5Wの立派な送信機!)、有難く活用させて貰う事にしました。

変調機については、位相反転トランスを使わない、素直な三極管PK分割の回路を採用しました。 

メーターについては、一つのメーターをバチバチ切り替えて使うのは如何にも使いにくいので、2基搭載しました。 プレート電流は常に監視したいですが、IGは調整時以外はモニターする必要がない、RF出力は必ず常時モニターしたい事などから、一つはIP専用、もう一つはIGとRFを切り替える方式(調整時など必要な時だけIGに切替える)としました。
50年前のクラシックな黒角メーターを使いたかったので、入手したものが5mA計だった関係で常時グランドできる分流抵抗を付けられないので、仕方なくメーター切替にリレーを使いました。

あくまでも「着工時」の図面なので、製作の過程で変更が加えられて行くと思います。(最終回路図は、当機が完成した段階で、最終版を掲載致します。)




送信系統全体の周波数構成はこのようになります。





それでは最初から順を追って製作過程をご紹介して行きます。




まずはメーターの穴あけから! これは鉄パネルのケースであるリードAS-1の鉄則?! 学生時代には、ハンドドリルとやすりとニッパーだけで丸一日かけて手を血だらけにしてメーターの穴を空けたのも懐かしい思い出です。
右側のメーターは100mA計でしたが、内部の分流器と倍率器をはずすと、本体は5mA計のようでしたので、目盛盤をスキャナーで取り込んだものをPCを使って画像ソフトで書き換え、シール用紙に印刷して張替えました。
演出のポイントとなる照明は絶対に省けません。 麦粒球を2個ずつ入れました。




鉄板パネルのメーター穴あけの手抜きがもろ見え! ここのやすりがけは、パネルが見事に共振して家中にガ〜〜ガ〜〜鳴り響くのでねぇ・・・。 ま、完全に見えない所なので性能に影響ない所は堂々と手抜きです。
トリオTX-88Dの取り外しパーツをフル活用です。 シャーシに奥行がないので、タンク回路部分は結構窮屈になります。




シャーシ裏にはOSCコイルとロード・バリコンを取付けます。




シャーシ上面のパーツはほぼ取付終わりました。 変調器の初段〜位相反転の部分は余裕で一列にきれいに配置する計画計画でしたが、パネル右下に取付ける予定だったスタンバイ用シーメンス・キーの取付位置を、RF部の配置の関係で左下に変更した為、真空管ソケットの穴あけの段階で、ソケットとシーメンスキー(意外と大きい!)が当たってしまう事に気付き、已む無くせせこましく、しかも斜め切って配置せざるを得なくなってしまいました。 部品取付・配線のスペースが大変厳しくなってしまいましたが、なんとかなるでしょう。




シールド板を張り、リレーやトランスの端子盤、後部の各種コネクターなど主要部品の取付が終わりました。  いよいよここからは「配線」の開始です。




まずは、一番面倒くさい電源部と基本的な制御系統回路を組み上げました。 この段階で電源を投入してジャンクのトランスに異常がないか各電圧を測定し、照明やリレーが動作するかをチェックしておきます。




続いて組んでいてちっとも面白くないAFアンプ回路を組み上げました。 更に細かな制御系統回路などすべて配線を済ませました。 
メーター切替回路の配線の都合上、ファイナルのソケット周りの配線も済ませてしまいました。
設計図に送信インジケーター・ランプ(赤のネオン管)の配線が漏れていたのですが、配線する段になって、どうしてもリレーの接点をひとつ使わなければならん事に気がつきました。
当然接点に余裕はありませんので、わざわざこの為に小さなDC12Vリレーを組み込む事になりました。(シーメンスキーの左側のシャーシの壁) AC100Vで点灯するネオン管にはこだわりがあったので止むを得ません。




いよいよ楽しみにしていたRF回路に取り掛かります。 50MHzバンドを含んだオールバンド機なので、タンク回路も最短配線でぎゅうぎゅうに押し込めました。




シャーシ裏の配線も始めたらあっと言う間に終わってしまいました。 RF回路はコイルさえ出来ていれば回路自体は本当に単純なので早いわけです。




これで組み立て終了! あとはいよいよ調整です。 まぁ一発では動かんでしょう・・・・(笑)




配線ミスはありませんでしたが、プレート同調回路の電源側でパスコンでアースに落としていなかったり(回路図に抜けていました)、直後で最短で落としていなかった為に、グリッド・ディップメーターで当たっても共振周波数が出ず、修正をしました。 あとはファイナルのタンクコイルに半田付けした際に垂れ落ちた半田くずがこびりついていたり・・・のドジはありました。 通電後はすぐにフルパワーが出てきました。

動作は大変安定していて、クリスタルを抜いてすべてのつまみを滅茶苦茶にチューンしてもIG計やRF計はピクとも振れません。 

早速横に置いたFT-817でモニターしてみましたが、キャリアーはこの手のAM機としては十分の品質です。 ハム音もほとんど感じません。 恐る恐るマイクを挿しAMで送信してみたら、なんとクリアーなFB変調!!モニターした限りでは申し分の無い音質です。 しかもS/Nが極めて優秀!! 先日製作した3.5/7MHzポータブル・トランシーバーとは雲泥の差?! 変調回路は徹底して一点アースを守り、シールド線の使い方(アースの落とし方など)、更に移設したシーメンスキーでスペースが無くなったお陰?で配置がマイクジャックから最短となったりの総合効果だったと思います。


さて各バンドでパワーを測定してみました。

バンド 出力
3.5MHz 14W
7MHz 13W
14MHz 12.5W
21MHz 12W
28MHz 10W
50MHz 6.5W

プレート電圧 プレート電流 入力
同調時最小 302V 85mA 25.7W
同調時最大 328V 70mA 23.0W


HF帯は設計出力の10Wをクリアーしていますが、50MHzは効率が落ちてしまいます。 バンド切替の引き回しの最短化には細心の注意を払いましたが、何分オールバンド機ですのでこの程度は仕方ないかもしれません。

あとは最後の細かい修正や改良です。




50MHzのAM変調をヘッドフォンで注意深くモニターしながらチューンを微調整すると位置によって変調が濁り、若干動作が不安定である事に気づいたので、中和を取ってみました。 ヤエスのFLDX400の解体部品で中和用のトリマーがありましたので利用しました。 動作は安定になりましたが、出力は最終的に5W程度になりました。(50MHz)  使用している6146Bはかなりくたびれたジャンクなので、新品と交換すれば50MHzも10W近く出るかもしれません。




実際に動かしてみると、特に50MHzでIGを流し始めるまでOSC段のあたりがとりにくい事がわかり、ネオン管の発振インジケーターを取付ました。 14MHz以上はこの段は同調回路となっていますので、発振すれば点灯するので、QSY後の同調が大変とりやすくなりました。




リードのAS-1は本当に良く出来たケースです。 上蓋がちょうつがいになってて簡単に開いてメンテナンス(場合によっては冷却の為?)ができるし、裏蓋もネジで簡単にはずせますのでメンテや簡単な修理・調整も可能です。
側面や背面に通風孔も開いているし、特に真空管のセット用にこれを上回るケースはないのではないでしょうか? 50年経ってもまだ同じ物が製造されているのは、それだけ完成度が高いケースだからだと思います。
難点は鉄のパネル!!(もうメーターの穴あけはしたくない〜〜) パネルだけアルミに交換して使ったら良いかもしれません。




これが最終的な回路図です。 詳細はこちらからPDFファイルをダウンロードしてご覧下さい。




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