真空管式 50MHz AM/FM/CW ヘテロダイン送信機の製作(MAFTX-50A)

- 2010年製作 -

【このページの最終更新日:2010年3月28日】

下の写真は当局が1970年頃の高校生時代に自作した50MHz送受信機です。  この懐かしの送信機は、2E26ファイナル10W、AM変調は6BQ5プッシュプルのプレート・スクリーン同時変調、FM変調はVFOにバリキャップでかけました。 受信機は高1中2にクリコンを内蔵させました。 夜な夜なのラグチューに本当に活躍してくれた懐かしい自作機ですが、惜しくもその後捨ててしまい今は残っていません。

歳を重ねる毎に?これがどうしても懐かしくて忘れられず、なんとか再現できないものかと考える様になりました。  幸いリードのケースAS-1はロングセラーで未だに製造販売されているのですが、MITSUMIのダイアルMD-5とか、VFO用のダイアル付バーニャ等は手に入りません。 それに昔自分が捨てた恋人とよりを戻そうと言うのも男として余りにも未練がましいしみっともない(笑)、と言うことで、初恋のイメージを抱きつつ更に進化させた「お兄さん」(お姉さん?)版を製作する事にしました。





普通のAM送信機は原発振周波数をてい倍して目的周波数を得ますが、50MHzともなるとさすがに周波数の安定は望めず、それは昔の自作機でも弱点となっていました。 そこで本機は、5MHzのVFOに水晶発振のローカルOSCをミックスする事により50MHzを得る事にし、VFOにはヤエスのFLDX400からはずしたユニット(12AU7/1本使用)を流用、まさに
SSB機並みの安定度を実現する事にしました。 

更にこれにより、今後製作予定の同じVFOユニットを利用した専用受信機と
トランシーブ操作ができる事になり、これも大きな特徴となります。

一方、FMを得る為には水晶にバリキャップで変調をかけても、てい倍をしないと十分な周波数偏移を得る事ができないと思われますので、本機は水晶発振のローカルOSCを6逓倍で得ることによりこの問題を解決する事にしました。




これが本機のブロック・ダイヤグラムです。

私の信条として、自作機にはお金をかけたくはありません。 高級新品パーツで自作するのも芸術作品を作り上げるようでいいかもしれませんが、
アマチュアの自作の真骨頂は「創意工夫」だと思うのです。 ジャンクや廃品の活用、リサイクルはまさに「時代の要請」でもあります。 このエコの時代の最先鋒です。

製作にあたり、母体としてトリオのAM送信機TX-88Dのジャンクを入手しました。 わずか数千円で、ケース、電源トランス、変調トランス、リレー、ロータリースイッチなど貴重なパーツを手にする事ができました。 また、VFOユニットはそのダイアルメカと共にヤエスのSSB送信機FLDX400のジャンクを利用しました。 ファイナルのシールドボックスやダストコアー入りのコイル・ボビン、配線用の立ちラグ板などもFLDX400の解体パーツを活用しました。




さて、以下が本機の回路図です。 検討に検討を重ね、取り敢えずこのような回路でとりかかる事にしました。







ヤフー・オークションで入手した格安ジャンクのトリオTX-88Dを到着と同時に惜しげも無く分解します。




裸になったシャーシを洗浄したあと、ジグソーでシャーシ上面を切り取ります。 電源トランス取付部の強度などを考えながらまずはど真ん中を四角く切り取りました。




切り取ったシャーシ上面に1.6ミリ厚のアルミ・パネルを貼ります。 これで新しいケース+シャーシに生まれ変ります。
ヤエスのFLDX400のジャンクから取り外したVFOユニットの取付けです。 構造上シャーシから沈めないといけませんので、アルミ板で取付アングルを作製して取付ました。




シャーシー上に電源トランスと、部品配置を見るためにTX-88Dの6BQ5プッシュプルの変調基板(使用はしません)を置いてみたところです。 




パネルをくり抜き、メーターとダイアル窓を確保しました。 




ファイナルのシールドボックスは、ヤエスのFLDX400から取りはずしたものを、役半分の大きさに縮小加工して使う事にしました。




とりあえずプレートバリコンの操作はできるようになりましたが、ロードバリコンの回しようがありません。




悩んだ末、トリオTS-520の分解パーツとして、ヤフー・オークションで売られていたチェーンとスプロケットを入手して、シャーシ下の回転軸からチェーンをかけて回すことにしました。
回転軸受けには、ヘッドフォン・ジャックを潰したものを利用しました。




こちらは作業中の工作室の様子です。




チェーンがうまくかかりました。 一方ドライブ2段のバリコンを連動させる仕組みは2晩悩みましたが、なんとかこのようなメカニズムと配置で解決できる見通しが立ちました。




真空管を取付け、シャーシ内にシールド板をめぐらし、リレーなども取り付けました。 とにかくスペースの余裕がないのと、正面にVFOユニットで場所を取られている為に部品配置は極めて厳しく、シールド板の張り巡らしにも熟考が必要でした。




最終的にどうしてもスペースが足りず、仕方なく電源トランスのパネル側のブロック電解コンデンサー取付スペースを潰すことにしました。 シャーシ強度を維持するために必要最小限のくり抜きとしてアルミパネルを貼りました。
電解コンデンサーは最近小型のものが出ていますので、なんとかシャーシ下に収める事とします。
パネル面には大分完成後の姿が見えてきました。




1ミリ厚のアルミ板で化粧パネルを作製して貼り付けました。 一気にドレスアップしました。 メーターも取り付けました。 メーターは化粧パネルに直接取付け、シーメンスキーは鉄パネルに取付けましたが、あとのパーツはすべて鉄パネルと化粧パネルと挟み込みで締め付けます。




2日間失敗を繰り返しましたが、2ミリ厚のアルミ板をヤスリ1本で加工してエスカッションを作製しました。 ヤエスのFL-100BとスターのST-700の折衷案とし、デザイン的にうまくバランスを取りました。
これでぐっと格好良くなりました。 




いよいよ配線に取り掛かりました。 まずは電源と変調回路、そしてリレー回路を組み、基本動作を確認しました。 (大事な電源トランスやリレーがジャンク取り外し部品ですので、この段階で問題が無い事を確認)




RF部の配線に取り掛かりました。 とにかくスペースのなさと部品配置の苦しさで、にらめっこと悩む時間の連続です。




配線の合間に、気分転換でダイアル・エスカッションの窓に、1ミリ厚のアクリル板にカッターでけがきを入れ赤インク(水性サインペン)を流し込んだものを裏から貼り付け、カーソルとしました。 これはなかなかうまく行きました。




バンド切替OSC回路を作りました。 とりあえず水晶は秋葉原で600円で売っていたぴったりの周波数のモノが一番右端に1個だけついています。(50.0〜50.5MHzバンド用)
どうしてもスペースがなく、水晶取付ラグ板はパネル裏側に金属スペーサーをハンダ付けで取付けました。(鉄パネルは加工が大変ですが、ハンダ付けが効くのでこういう時は便利です) 発振コイルはFLDX400解体パーツの中でぴったりのものがありましたので、巻き直し無しで使いました。




配線漏れがあるかもですが、ついに全て組立完了しました!(つもり)
配線の束線とかは完成後の最後の仕上げで綺麗に行います。 調整の段階でどういう事態が発生するかわからん ので・・・回路の見直しとかね




火入れ式敢行!!

一旦作業机の上を掃除機とかで綺麗にしてから深呼吸。 いつでも部屋から脱出・非難できる体制を整えてから (昔から真空管式の機器の火入れはいつもこうだったね・・・あはは〜〜)コンセントを挿し込みます。
え? 配線の見直ししたかって?? そりゃ〜もう、それって基本中の基本ですよね。 はい、していません!  ま〜〜組立の途中で何回も何回も見直してるし、基本回路までは火入れ試験はしているので、ここは一発勝 負!男の子っ!!

電源スイッチオン!
顔をそむけろ! 逃げろ〜〜〜!!

ん? 即爆発はないみたいです。 ヒーターも暖まりましたが目を凝らしても煙は出てきません。 におい、音、振動などありません。

ふ〜〜っ。 やれやれと思ったのもつかの間。 大胆にもスタンバイスイッチ・オン! 
カチッ!大きな音でリレーが入ります。 プレート電流計がわずかに触れている(なんでわずかしか振れねぇん だ・・・C級動作なのに・・ま、いいや)

普通はここまでやらんでしょうね。 まぁなんちゅ〜か、ケガの治療する時に目つぶって一気にかさぶたを剥い でしまうようなもんで・・・・ もうこれ以上悪い事はおこらんのだから一安心。
と、言う事で一旦電源断。 買い物にでも行って一回頭を冷やしてから調整にとりかかろうと思います。




調整にとりかかってみると、なんと激しいセルフ発振! 打てるとこにはすべてパスコンを打ったりRFCを挿入したり、ヒーター電源線の引き回し全面やり直し、バイアス・ライン引き回し全面やりなおし、変調トランスへの配 線全面やり直し、段間のシールド板の設置、6AQ5〜6146の信号線のシールド側解放など、かなり手を尽くし切りましたが原因がわからず、数日間しこりました。 最終的に、6146のところに見えているRFCを市販の2.5mHや1.0mHから、エナメル線で30ターンほど巻いたモノに交換した事が決め手となって解決しました。

ヘテロダイン部からシグナル・トレースしてみましたが、最終的にちゃんと50MHz台のRFが生成されています。 ただ最後のヘテロダイン(35MHZ+15MHz)後のレベルが低 い為に、今のところC級でRF増幅部をドライブできていない状況。

調整の過程で、この周波数構成ではスプリアス上の問題で使い物にならん事に気付きました。 更にFLDX400のVFOの発振周波数が、「逆ダイアル」(0〜500KHzに対応する発振周波数が5.4〜4.9MHz)になっており、差のヘ テロダインを組み込まないと使えない事にも気付き、設計変更を迫られております。  検討を重ねていますが、無線機メーカーの悩みどころである事が良く分かります。 本当にヘテロダインの周波数構成は難しい! あっちが立てばこっちが立たず・・・




これがベストがどうかわかりませんが、思い切って局発周波数を50MHzより高いところにとってこんな構成で行くことにしました。 現状の構成からの改変も最小限に留められ楽そうだし・・・
5MHzの局発は、もしかしたら10MHz直接発振の方が良いかもしれません(VFOの周波数との干渉上)が、これは後で簡単に変更可能なので、FM変調周波数偏移確保の余力を残したままとりあえずこれで試してみます。
とり急ぎ65MHz台の3rdオーバートーン水晶を発注しました。




これが今回の設計変更と色々と細部の変更を加えた回路図です。 当初のモノとは大分変わりました。




特注の水晶が届いて、改造・調整中です。 さすがにヘテロダインさせるとなると、測定器無しではどうにもならず、これを機にシャックから測定器群を工作室に引越しました。
ここまで作ってからの回路変更は大変です。 スペースが確保できないし信号の流れもうまくとれない、シールドが難しいなど難問山積みとなってしまいました。

FM変調は逓倍無しでもなんとか方法があるだろうと、ローカルOSCは10MHzとし、VFOと足して15MHz台を得ています。 実際に調整してみると、ダブルコンバージョンとなると無数のスプリアスが簡単に発生してくるし、混合レベルの調整もさることながらフィルタリングが最大の鍵となって来ました。 ここからはじっくりと時間をかけて取り組む事にしました。 

パネルをレタリング済み化粧パネルに交換する作業を残して、組立て方はここまででとりあえず完了しました。



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