新人ハムの方へのお願い
〜 危機に直面している日本の「アマチュア無線」 〜

【このページの最終更新日:1997年12月31日】

私がアマチュア無線を始めたのは1967年、高校一年生の頃で、もう30年前になります。 以来、アマ チュア無線は良きにつけ悪しきにつけ私の人生の中核にあり、私の人生は全てアマチュア無線を基盤 に広がって来たと言っても過言ではありません。 この素晴らしい世界を、ひとりでも多くの方に知 ってもらい、興味があれば仲間に入っていただければと、いつも願っている事は言うまでもありませ ん。 そして、この世界がいつまでも健全に栄えて、私にとってそうであった様に人々の世界を大き く切り開いていくかけがえのない存在であり続けて欲しいと念願しております。

ところが、近年の 日本のアマチュア無線界で愁うべき事態がはびこりつつある現実には、強い失望感と危機感を抱かざ るを得ません。


(1) アマチュア無線界の技術発展

我が国の、そして世界のアマチュア無線も、この30年間で技術面において様変わりの進化をとげて参 りました。


【30年前】

● メーカー製の無線機器はHF帯、50MHz用が少し作られていただけで、多くのハムは受信機、送信機、 VFO(可変周波数発信機)をすべて自作していました。

● 電波形式はPHONEではAMが全盛で、SSBはバンドの隅で何かモガモガ言っている電波が出ているがあ れがSSBらしい、と話題になる存在でした。

● アンテナは竹竿にワイヤー・アンテナが全盛(HF帯の話)で、一部のハムがはしごでタワー(もど き)を組み上げ、竹で作ったキュビカルクワッドや、せいぜい3エレのヤギアンテナを自作し、羨 望の眼差しを浴びていました。

● ハム=無線・電子技術に興味のある人間で、その意味では知識人の集団でした。 多くのハムは常に 新しい技術に興味を持ち、色々な実験をしながら無線交信を楽しんでいました。 運用面でも前人未 踏の交信記録の樹立に、技術面での工夫を繰り返しながら挑戦していました。


【現在】

● 数え切れないほどの高性能なメーカー製の通信機があふれ、アンテナ・ケーブルのコネクターのは んだ付けはもとより、はんだごてすら握った事のない(握れない)ハムがめずらしくなくなりまし た。

● お金さえだせば、技術的知識・経験・理解力の有無に拘わらず、最新の通信方式での交信ができる 様になりました。 お金さえ持っていけば、機器の選定から設置まですべてやってあげるアマチュ ア無線機器販売店まであらわれ、免許を持っていない人間までが平気で出て来る様になりました。

● 通信方式は飛躍的に進歩し、画像・パケット・衛星通信等、マルチメディア化が実現しました。

● 送信設備も巨大化し、現在日本の最大出力局は関西の某局の60KW(もちろん違法です)と言われて います。

● 20メートル程度のタワーは当たり前で、40メートル、60メートルのタワーまで出現し、搭載するア ンテナは高性能化、巨大化し、かつては絶対不可能と思われていた1.9MHzの回転式指向性アンテナ まで現れました。


(2) UHF帯に侵入した、レベルもモラルもない異文化

この様な変貌をとげたアマチュア無線界ですが、その背景にはもちろん世の中の電子技術の進歩と、 生活水準の向上がある事は言うまでもありません。 しかしながらこれらの要因は、すべからく、通 信方式の向上、通信設備の向上、利用価値の向上に帰結すべき要因であり、今、特にUHFのFMバンド を占領するモラルもレベルもない不法・無法無線局の耳を覆いたくなる様な「4次元」の言葉や会話 や運用振りはいったいどこから生まれたのでしょうか。

それは「講習会制度」の産物であり功罪である事に、異論をはさむ人はいないでしょう。 年に2回 しかない国家試験に合格しない限りハムなれなかった時代から、2週間程度の講習会に通い、合格率 99%の卒業試験に合格さえすれば、初級免許が与えられる様になった事がすべてのはじまりでした。 この制度のおかげで多くの素晴らしいハムが誕生し、アマチュア無線の新しい歴史を築く様になり、 これが需要を喚起し、メーカー製の優れた通信機が次々に誕生する様になった事は、アマチュア無線 の歴史において歓迎されるべき成果でありました。

しかし、一方で、「君も格好いいカー無線をやらないか?」と言う乗りで、次々に技術に関心も能力 もを持たない、本来なら一生ハム等になる(なれる)はずのない人々までが、免許を取得する結果を 生んでしまったのです。 当然モラルが保たれる訳がありません。 それまで共通の価値観の下に自 然に生まれる不文律的な意識の中で保たれていたアマチュア無線界の秩序の崩壊が始まったのです。

すなわち講習会制度は強烈なもろ刃の刃(やいば)であったのです。その最悪な形が無免許のトラッ クドライバー達です。 無免許で運用できる市民無線(CB)よりはるかに交信距離が伸びるアマチュア 無線機が簡単に手に入る様になり、彼らは免許が必要なアマチュア無線機を不正使用する様になりま した。 一日中仕事をしながら電波使用区分帯も紳士的な運用ルールも守らず(もともと無免許です から守る意味もない!)、あげくの果ては合法運用をしているもともなアマチュア無線局に文句をつ ける、故意に妨害を与える等、UHF帯のバンド中を乗っ取らんばかりの行動にを見るに至っては、誰 にでも免許が与えられ、簡単に市販無線機が手に入る様になった事を憂えずにはいられません。

幸いな事にもともと仲間内のおしゃべりが目的で、技術や言語に興味を持たない彼らがHF帯に出て来 る事はまれで、ほとんどが144MHzないしは430MHz等のUHF帯に留まっています。 従ってHF帯、特に 海外との交信が中心となる14MHz〜28MHzでは、海外局の一般的なモラルと裁定される効果も手伝い、 「汚染」は最小限に留まっています。

問題は、多くの新人ハムは、手ごろなUHF帯から運用を開始するケースが多く、何も実態を知らない 新人達が、その「汚された」運用振りを、「普通のアマチュア無線の姿」として受け止め、それをそ のまま継承して育って行っている現実です。 最近ではHF帯の一部ですら(国内同士の交信ですが) 思わず耳を疑いたくなる様な(覆いたくなる様な)交信を聞く事があります。 常に時代の先進の技 術を追い求め、各人の創意と工夫にチャレンジし、世界中の人と人との出会いを与えてくれた魅力あ るアマチュア無線はいったい何処に行ったんだ、と思わずにはいられません。

私は、私自身にとってそうであった様に、アマチュア無線は常にそれを行う者にとって人生の可能性 を拡げてくれるかけがえの無い存在であって欲しいと願っています。 決して単なる道楽や道具でな く、ましてや自分だけのエゴや欲望で他人に迷惑を与え、傷つけ社会を破壊する物であっては断じて ならないと思うのです。


(3) 明らかにおかしい運用方法と、用語

そんな中で、先輩ハムの一員として、新人のハムの方達(もちろん、まじめな合法局の方達です)に 是非振り返って頂きたい、現実に行われている運用方法、用語があります。

これらの多くは、彼らの古巣である市民無線(CB)の文化がそのままアマチュア無線界に持ち込まれ たものであり、中には知性と教養を疑わざるを得ないものも多くあります。 本来アマチュア無線を やるはずでなかった方々が、アマチュア無線の知識や、伝統や常識を踏まえずに作ってしまった聴く に耐えない異次元語と言わざるを得ません。

問題なのは、彼らがアマチュア無線を運用するのも、また彼らの知識と経験から運用できるのも「カ ッコイイ、カー無線たるUHF帯」であり、それがまともな初心のハムが最初に利用する周波数帯で ある、と言う事です。 懸命な新人ハムの方達の多くが、それはこの世界の慣習だと信じて疑わず、 最初は首をかしげつつも、知らず知らずの内に常識化し同化して行くのを見るのは、実に偲び難いも のがあります。

私は彼ら及び彼らと同類の方々には何も申し上げるつもりはありません。 夢と希望を以ってこの世 界に飛び込んで来た懸命なハムの方々に是非この世界で起こっている事を見極めて頂きたいのです。 その方達ご自身の為と、私をはじめ本当にアマチュア無線を愛してきた人達の為に。


■ 「私の名前は青木と申します。 『漢字解釈』は....」

→ 軍隊じゃぁあるまいし、何故「私の名前は青野と申します。 青色の青に野原の野と書きます」 と、口語体で言えないのでしょう。


■ 「センター局にお返しします」

→ ラウンドテーブルQSOを行っている時に、必ず全体を仕切る『親分』局がいて、その局の事 をセンター局と呼んでいる様です。 テレビの中継をやっている訳でもないし、やくざの仁義 の世界でもないし、そもそもアマチュア無線の「交信を仕切る局」などと言う存在はないし、 電波法でも定義されていません。 ただ、

  A. 超珍局を多数の局が呼び、交信成立に収拾が付かないやむを得ないケースでは、国際的に も、強力な設備を持っている局が間に入って、少しでも多くの局がその珍局と交信できる 様に手助けするケース

  B. 多数の不特定多数の局が、決められた時間に決められた周波数に集まって情報交換するネ ット(Net)とを組成する場合は、国際的にも、「マイク・コントロール」と呼ばれる代表 (核)となる局がチェックイン、チェックアウトを確認するケース

がありますが、その場合でも

  ・その珍局に依頼(指名)された局が、交信の交通整理の範囲内で臨時に対応する(Aのケー ス)とか、ネットの性格上どうしても必要である(Bのケース)のであって、何も必然性の 無い通常の交信の状況下で行う事はありません。

  ・その場合でもセンター局(center station)等と言う呼称はありません。 誰かが作った極 めてわかりやすい和製英語です。


■ 「他にワッチ局(ご待機局)ありますか?」

→ 430MHzである方と普通のラグチューを1時間ほど楽しんで、ファイナルを送った後で、突然、相 手の方が、こう叫ばれたのには唖然としてしまいました。 今まで1対1で長時間QSOをして いた間、ずっと誰かを待たせていたつもりなのでしょうか? それとも自分が世の中の中心で、 いつも誰かに呼ばれる存在だと思っているのでしょうか? 1対1のQSOが終わったのなら それで両者ともそれで終わりです。 だいたいパイルアップを受け、次々にQSOをしている状 況ならともかく、「他に」とはその瞬間までラグチューをしていた相手局に対して失礼ですネ。


■ 「これにて433.98オープンします。 各局さん、ありがとうございました。」

→ 極めつけは、誰も「待機局」なるものがいなかったので発した最後のこの一言です。 大体「オ ープン」なんて言葉はありません。 英語では「leaving this frequency」と言います。 つまり「この周波数から去ります」と言うことであり、あたかも自分がその周波数の所有権を オンしたりオフしたりできる様な思い上がった表現は使いません。 だいたい「各局さん」と 言う表現も気持ち悪い(「各局」だけで良い)のに加え、「ありがとうございました」と何故 お礼を言う必要があるのでしょうか? 周波数は特定の局の所有物ではありません。 既に交 信を行っている他局に妨害を与えなければ、誰に断りや仁義を入れなくても自由に使える公共 のスペースです。 どうしても一言言いたいのであれば、せいぜい「JR1MAFはこれにてQRT致 します」程度でしょう。 あえて言う必要は全くありません。


■ 「CQ430、こちらはJR1MAF。 『次回』433.20にて待機いたします。 各局さん、よろしくお願い致 します」

→ なんじゃこの「次回」ってのは? ああ、また「各局さん」かぁ〜、と言う感じですネ。 「CQ430、こちらはJR1MAF。 433.20にてコールをお待ち致します。 受信します。」って辺り が本来の言い方ではないでしょうか。


■ フレンド(フレンド局)

→ 良く知っている親しい局、特に近所の局をこう呼ぶ様ですが、英語を良く知っている方ななら 何とも滑稽に聞こえる事でしょうね。 少女クラブじゃあるまいし、気持ち悪いってのが素直 な感想です。 アマチュア無線界では昔からローカル(ローカル局)と呼んでいます。 DX= distance=遠い局)に対しローカル(Local=近い局)と言う訳です。 英語としても正しい 表現です。


■ 「それでは落っこちます」

→ QRTする、と言うことでしょうけれど...


■ 「チャーリー・ナンバーは1405です」

→ 最初は何を言いたいのかわかりませんでしたが、聞き返すとJCCナンバーとのこと。 JCC の C をフォネティック・コードで略称したのでしょうけれど、上の「落っこちます」等と同じ様に 子供がなんでも略して愛称付けて呼んでいる、と言う印象です。


(4)最後に

これらの言葉は、私が常日頃感じている問題点のごく一部に過ぎませんが、懸命な初心者の方は、 その他にもお気づきの点が思い出されるのではないかと思います。

大事なことは、これらの問題は単に用語や言葉づかいの問題だけに止まらないと言う事です。 言葉は思考・発想そして文化を築い ていきます。 言葉が軽くなると言うことは、人間の思考や文化にまで影響を与える事は既に歴史が 証明しているところです。 これを機会に、回りで見れる事象をつぶさに観察し、少なくとも知的趣 味であるはずのアマチュア無線のモラルを維持・回復されん事を願って止みません。

最後に、この様なモラル低下は世界的規模で発生している訳では有りません。 先進国日本が抱えてい る問題です。 日本のアマチュア無線が、間違っても世界から孤立していく事のない様に切望します。

アマチュア無線をやっているからには、是非HF帯で海外局との交信にチャレンジして頂きたいと思 います。 アンテナ等、その為の十分な設備がない方は是非ワッチだけでもして頂きたいと思います。 何事も自分の周りの世界だけ見ていると判断を誤ってしまいます。 視野・見分を広く持つ事が、今 何よりもこの世界に求められているのだと思います。

1997.12.31記


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