天体写真の撮影の仕方

【このページの最終更新日:2000年6月28日】
1.星野写真(星座の写真)の撮影
[静止撮影]
カメラは以下の条件を参考に選択します。
シャッターを押している間だけシャッターが開いているモードである、「B(バルブ)」と言う
ポジションが選択できる事が必要です。 また、その場合でもシャッターボタンの真中にネジ
穴(直径2〜3ミリ)が空いている事が必要です。 このネジ穴にはレリーズを取付けます。
レンズは明るいものが必要です。 明るさはFで表されます。Fはレンズの焦点距離/レンズの
口径の比で、数値が小さい程明るくなります。(暗いものまで良く撮れる) Fは最低でも3.5、
出来れば2.8以下が望まれます。
レンズの焦点距離(カメラの正面、レンズの外側に刻印してあります)は写真の写る範囲(広さ)
を決定します。一般的に標準レンズと呼ばれているものは50mmから55mmありますが、通常の
35ミリ版カメラでは比較的写る空の範囲は狭くなってしまいます。 35mmから45mm程度の方が
使いやすい事が多いですが、実際にファインダーをのぞいて見て、写したい範囲が収まってい
れば、一般的には焦点距離が長いレンズの方が暗い星までたくさん写ります。
フラッシュを解除できないとか、Bポジションが選択できないオート専用カメラは不適です。
カメラにはレリーズを取付けます。 レリーズは写真用品店で千数百円程度で売られています。
長さは10cmから30cm程度まで各種ありますが、できるだけ長い方が便利です。 レリーズを使っ
てシャッターを切る事により、
シャッターを切る時にカメラに触れないで済むので、カメラ・ブレが防止できます。
Bポジションでシャッターを長い間押したままにする時、レリーズのロック機構を利用してシ
ャッターをオープン状態で放置できる様になります。
レリーズをカメラに取付けた所
レリーズを付けたカメラを三脚に固定します。 ピントは必ず無限大(∞マーク)にする事を忘れ
ない様、注意します。(始めの頃は良く忘れます!)絞りは開放(一番明るい=F値が小さい状態)
にしますが、Fが充分明るいレンズの場合(F2.0以下)は、余裕がありますので、一段絞り込んだ方
が(一段F値を大きい方に回す)、周辺減光(写真の周辺=外側で光量が減少するレンズの特性)や、
収差(写真の周辺で星が完全な点として写らずボケたり、いびつな形の点となる)を押さえ込む事
ができます。 特に暗い星を写すのでなくて、明るいレンズを使う場合はこの様に一段絞り込む
事によって、より美しい写真が撮れる様になります。
問題は露出時間です。 レンズの焦点距離や、撮影する天の位置によっても異なりますが、30秒
程度に押さえると、星はほぼ点として写ります。(空の星は東から西に動いていますので露出を長
くすると点とならず、線として写ってしましいます)
下の表は、天の位置(赤緯)とカメラレンズの焦点距離別の、ほぼ点像として撮影できる限界秒数
を表しています。 赤緯とは、地球の緯度線を、そのまま天に伸ばして貼りつけた時の緯度です。
北緯35度の地点では、北極の延長点は、真北の空の地上35度上がった点で、そこを中心に天は東か
ら西に回転して見えます。 真南の空の地上から35度上がった所が赤道(地球の赤道の延長線:地
球儀を思い浮かべるとわかりますね)で、赤緯は0度です。天頂は赤緯55度になります。
天の北極を中心に同心円状に回転しているので、中心から離れるほど(赤緯が0度に近いほど)同じ
時間に線として動く距離は長くなる訳です。
| . |
20mm |
28mm |
35mm |
50mm |
85mm |
| 赤緯0度 |
34秒 |
24秒 |
20秒 |
14秒 |
8秒 |
| 赤緯20度 |
36秒 |
26秒 |
21秒 |
15秒 |
9秒 |
| 赤緯40度 |
45秒 |
32秒 |
26秒 |
18秒 |
11秒 |
| 赤緯60度 |
69秒 |
49秒 |
39秒 |
27秒 |
16秒 |
| 赤緯80度 |
3分17秒 |
2分21秒 |
1分53秒 |
1分19秒 |
46秒 |
気温・湿度によってはレンズが曇ってしまう(息をはきかけた時の様に)ので、その様な場合には
レンズの筒の周りに携帯カイロ(ホッカイロ等)を巻きつけて、暖めてやる必要があります。
さて、使用するフィルムですが、通常はできるだけ高感度の物が便利です。 通常はISO400以上
の製品を使用します。
| . |
フィルム名 |
ISO/ASA(感度) |
35mm版 |
APS版 |
60mm版 |
標準的な撮影対象 |
| コダック |
エクター25(P) |
25 |
○ |
. |
○ |
月、太陽 |
| |
ロイヤルゴールド25 |
25 |
○ |
. |
. |
月、太陽 |
| . |
ロイヤルゴールド100 |
100 |
○ |
. |
. |
月、太陽 |
| . |
ロイヤルゴールド400 |
400 |
○ |
. |
. |
月、惑星、星野 |
| . |
ゴールド100 |
100 |
○ |
. |
. |
月、太陽 |
| . |
ゴールド200 |
200 |
○ |
. |
. |
月、惑星 |
| . |
ゴールド400 |
400 |
○ |
. |
. |
月、惑星、星野 |
| . |
GOLDこれ一本 |
800 |
○ |
. |
. |
惑星、星野 |
| . |
ゴールド1600 |
1600 |
○ |
. |
. |
星野、流星 |
| . |
コダクローム(P)E100S |
100 |
○ |
. |
○ |
Hα高感度・増感現像で星野 |
| . |
コダクローム(P)E100SW |
100 |
○ |
. |
○ |
Hα高感度・増感現像で星野 |
| . |
コダクローム(P)E200 |
200 |
○ |
. |
○ |
Hα高感度・増感現像で星野 |
| . |
アドバンティックス100 |
100 |
. |
○ |
. |
月、太陽 |
| . |
アドバンティックス200 |
200 |
. |
○ |
. |
月、惑星 |
| . |
アドバンティックス400 |
400 |
. |
○ |
. |
月、惑星、星野 |
| . |
カラープロ1000 |
1000 |
○ |
. |
○ |
星野、流星 |
| . |
エクタクロームインフラレッドEIR(P) |
赤外 |
○ |
. |
. |
赤外線写真撮影用 |
| コニカ |
コニカカラーIMPRESA50(P) |
50 |
|
○ |
○ |
月、太陽 |
| . |
コニカカラーJX100 |
100 |
|
○ |
○ |
月、太陽 |
| . |
コニカカラーJX200 |
200 |
○ |
|
. |
月、惑星 |
| . |
コニカカラーJX400 |
400 |
○ |
○ |
○ |
月、惑星、星野 |
| . |
コニカカラーLV100 |
100 |
|
○ |
○ |
月、太陽 |
| . |
コニカカラーLV200 |
200 |
|
○ |
. |
月、惑星 |
| . |
コニカカラーLV400 |
400 |
|
○ |
. |
月、惑星、星野 |
| . |
コニカカラースーパーDD200プロ |
200 |
|
○ |
○ |
月、惑星 |
| . |
コニカカラーGX3200(P) |
3200 |
|
○ |
○ |
星野、流星 |
| 富士 |
フジカラーREALA ACE |
100 |
. |
○ |
○ |
月、太陽 |
| . |
フジカラーSUPER V100 |
100 |
. |
○ |
○ |
月、太陽 |
| . |
フジカラーG100 |
100 |
. |
○ |
○ |
月、太陽 |
| . |
フジカラーG200 |
200 |
. |
○ |
○ |
月、惑星 |
| . |
フジカラーSUPER G ACE100 |
100 |
. |
○ |
○ |
月、太陽 |
| . |
フジカラーSUPER G ACE400 |
400 |
. |
○ |
○ |
月、惑星、星野 |
| . |
フジカラーSUPER G ACE800 |
800 |
. |
○ |
. |
惑星、星野 |
| . |
フジカラーSUPER G800 |
800 |
. |
○ |
. |
惑星、星野 |
| . |
フジカラーHG1600 |
1600 |
. |
○ |
. |
星野、流星 |
| . |
フジカラーnexia A |
200 |
○ |
|
. |
月、惑星 |
| . |
フジカラーnexia F |
100 |
○ |
|
. |
月、太陽 |
| . |
フジカラーnexia H |
400 |
○ |
|
. |
月、惑星、星野 |
| アグファ |
アグファカラーウルトラ50 |
50 |
|
○ |
○ |
月、太陽 |
| . |
アグファカラーHDC100 |
100 |
|
○ |
. |
月、太陽 |
| . |
アグファカラーHDC200 |
200 |
|
○ |
. |
月、惑星 |
| . |
アグファカラーHDC400 |
400 |
|
○ |
. |
月、惑星、星野 |
| 3M |
スコッチカラーEXL100 |
100 |
. |
○ |
. |
月、太陽 |
| . |
スコッチカラーEXL200 |
200 |
. |
○ |
. |
月、惑星 |
| . |
スコッチカラーEXL400 |
400 |
. |
○ |
. |
月、惑星、星野 |
左から、ISO100、ISO200、ISO400、ISO800、ISO1600、ISO3200 の各フィルム
[ガイド撮影]
三脚にカメラを固定して星の写真を撮るときには、天が東から西に動いて行くので、あまり長い
時間露出する事ができませんでした。暗い星まで写そうとして露出時間を長くしても、フィルム
の上をその星はどんどん移動して行って線になってしまうだけで、暗い星が写る様になるわけで
もないし、第一、線だらけになると、星座の形もわかりにくくなってしまいました。
要は、フィルム上で星が一点にずっと留まってくれれば、暗い星も写るし、見にくい線だらけの
写真にもならない訳です。 そこで登場するのがこの「ガイド撮影」です。
カメラを天の動きに合わせて、常に少しずつ動かしてあげれば言い訳ですが、天の動きは極めて
少しずつですから、三脚に載せたカメラを手でうまく天の動きに追尾させる事は不可能です。
そこで登場するのが天体望遠鏡です。 天体望遠鏡と言っても、望遠鏡で覗いた画像を撮影する
のではなく、望遠鏡を覗きながら、望遠鏡についている微動装置を手で少しずつ動かしながら、
まず望遠鏡を天の動きに合わせて動かすのです。望遠鏡で倍率を上げて天の星をどれか覗き、そ
の星が視野の中央に留まるように、少しずつ精緻に動かしていくのです。 カメラはこの望遠鏡
の上に取付金具(雲台)を付けておいて、そこに取付けて、どこか撮影したい方向に向けてやれば
いいのです。
ガイドに使う望遠鏡の条件は以下の通りです。
経緯台(水平方向と垂直方向に首を振れる架台に載せられた望遠鏡)は不可。赤道儀(天の北
極=ほぼ北極星の方向を中心とする回転=赤経と、天の北極から放射状に伸ばした線に沿った
方向にも回転=赤緯方向に首を振れる架台に載せられた望遠鏡)タイプである事。
天の動きは、地球の自転であり、地球は北極から南極に突き抜ける軸を中心に回っています。
地球の北極の延長線上にあるのが北極星ですが、(若干ずれていますが)これは北緯35度の所な
ら北の空の地平線から角度で35度上がった所になります。 みかけ上、ここを中心に天は回転
して見えるので、水平・垂直方向にしか動かない望遠鏡(経緯台タイプ)では、正確に追従でき
ないのです。(いつも水平と垂直の二つの微動装置を操作しなければいけません。更に追従さ
せたとしても、視野の中で少しずつ回転して行ってしまいます。)
赤道儀タイプの望遠鏡は、回転軸が最初から35度(調整できる)傾いており、この軸を天の北極
(だいたい北極星の位置)に向けることにより、この軸を中心に回転させる(赤経方向の微動装置
を操作するだけ)で正しく天の動きに追従できるのです。
接眼レンズに十字線と、それを真っ暗の夜空の背景上で浮かび上がらせる照明装置が組み込
まれた物を用意する。 この接眼レンズを撮りつけた赤道儀タイプの望遠鏡で適当な星を覗き
暗い背景上に浮かび上がっている十字線の交点に常にその星が残る様に、赤経方向の微動装置
を少しずつ回し、星の動き(天の動き)に追尾(ガイド)させます。
照準付暗視野照明接眼装置(Vixen社GA-4)
最近は、モーター・ドライブ装置を付けた赤道儀が安くなり、かなり普及して来ました。
モーター・ドライブが付いていれば、ほとんど正確に自動追尾してくれます。時々望遠鏡を覗
いて若干出たずれだけリモコン・スイッチで修正してやれば良いので楽です。 また、CCD
カメラを組み合わせた、完璧な追従システムもあり、高価な赤道儀システムでは何時間露出し
ても、まったくのノータッチで完璧な点像の星の写真を撮る事ができます。
D60mm/f910mm屈折赤道儀(赤経モータードライブ) にカメラを同架しガイド撮影
ガイド撮影の場合は何分でも安心して露出できますし、精度の高い追尾ができるのであれば、カ
メラに望遠レンズをつけることにより星雲・星団の美しい写真撮影も可能になります。むしろ空
が人工光や月明かりなどで明るい場合は、背景が白っぽくかぶって来てしまいますので、使用す
るフィルムや絞り(通常は、露出は充分かけられるので、星像の精度を得る為に絞りはやや絞り込
んで使います)の設定に注意が必要です。
2.流星写真の撮影
流星と言っても、基本的には「静止撮影」と「ガイド撮影」があり、一般の星野写真の撮影と変
わりません。 ただ、流星と言う被写体の特性上、幾つかの留意事項があります。
まず、流星はどこに出現するかわかりませんので、あまり視野の狭いレンズを持ったカメラ
だと撮影できる可能性が極端に小さくなってしまいます。 視野を広くする為には広角レンズ
を選べば言いのですが(f値=焦点距離が35mm以下)、広角や望遠になると、今度はF値(レンズ
の明るさ)が大きく(暗く)なりますので、暗い流星が写りにくくなります。 広角や望遠でもF
値の明るいレンズはありますが、高価になります。 f=35mm前後が使いやすいと思います。
流星の撮影にあたっては、できるだけ複数台のカメラを同時使用することをお勧め致します。
それぞれのカメラを天の異なる方向(範囲)に向けてやればいい訳です。 実際に丸一晩頑張っ
て、肉眼では何十個も流星を見れたのに、用意したカメラで撮ったフィルム3本全部併せても
捉えられた流星はたったの1個か2個と言う事は良くあるのです。 一台の大きな三脚に、自作
した、「5台分のカメラ取付雲台を付けたカメラ同架装置」を載せて、5台のカメラには一本
のレリーズで同時にシャッターを操作をできる様に改造したレリーズアダプターを付けて効率
良く撮影している様な例も良く見かけます。
星野写真撮影専用赤道儀(赤経モータードライブ) D70mm/f400mmガイドスコープ同架
複数台のカメラを同架した上でガイド撮影が可能。流星撮影にも最適。
3.望遠鏡を使った写真(太陽・月・惑星)の撮影
(1) 撮影方法
[間接撮影]
望遠鏡で覗いたそのままの状態で、カメラのレンズを、望遠鏡の接眼レンズに軽く押し当てる様
にして撮影します。 特殊なアダプターもいらず、カメラも選びません。 低倍率(数十倍)での
月面撮影であればなんとかこれでもうまく撮れますが、@手持ち撮影となるのでブレやすい
A接眼レンズとカメラのレンズの中心があってないと、視野が欠けたり、像が歪んだりします
B介在するレンズが多く、シャープな像が得にくい、等の問題があります。
とりあえず試してみたいと言う場合は、簡単にできる(だけど、うまく撮るには熟練が必要)方法
です。 ちゃんとしたカメラを持っていなくても、使い捨てカメラでもうまく撮れる場合があり
ます。
絞りは開放(一番開く=F値を小さくする)にセットします。 あとはシャッター・スピードで調整
しますが、この方法の限界はせいぜい1/30秒です(それより遅いとまずブレます)。6cm〜10cm
程度の望遠鏡を使い、フィルムは一般的なISO400を使って月面を撮影するとした場合、望遠鏡
の倍率は(倍率が高くなると像は暗くなるので)、50〜80倍程度に抑える必要があります。
[直焦点撮影]
この方法はカメラのレンズをはずして、カメラのボディだけを使用します。従って、カメラは一眼
レフと言う事になります。 望遠鏡側は、接眼レンズをはずして、市販のアダプターを使って、
本来接眼レンズを取りつける変わりに一眼レフのボディを取付けます。 要は、望遠鏡の対物レ
ンズを、カメラの望遠レンズとして使うのです。小型望遠鏡の対物レンズの焦点距離(f)は
1,000mm前後あります。普通のカメラ用の望遠レンズはせいぜい200mm〜300mmですから、かなり威
力のある望遠レンズと言う事になります。この対物レンズの焦点距離1,000mmを対物レンズの口径
で割ったものがいわゆるF値です。 口径8cmの望遠鏡であれば1,000/80=「F12.5」と言う事にな
ります。これはカメラ用の望遠レンズとしてはかなり暗いと言う事になります。(普通はF4〜F5.6
位ですね)
接眼部に一眼レフを取りつける為にはリング状のアダプターが必要です。(数千円程度) また、重
たいカメラを固定する訳ですから、望遠鏡自体がカメラのシャッターで(一眼レフはシャッターの
ショックが大きい)ブレたりしない物である事も大切な条件です。
露光量の調整は、絞りがありませんのでシャッタースピードだけとなります。 上の間接撮影や、
下の拡大撮影に較べるとフィルム面上の像はかなり明るいので、シャッター・スピードは比較的
早く切れるので(口径6cm〜10cm、f=1,000mmとして半月をISO400のフィルムで撮影する場合1/125
秒程度)楽ですが、当然フィルム面上の像は他の方法に比べて小さくなります。
[拡大撮影]
直焦点撮影では像が小さいので、小型望遠鏡では月面の詳細や、惑星を撮影する時は物足りなくな
ってしまいます。 直焦点撮影時の接続アダプター内に望遠鏡用の接眼レンズをはめ込める様に
した拡大撮影用アダプターを使って(多くの場合、直焦点撮影アダプターと共用できる様になって
いる)、望遠鏡で普通に覗いた像をカメラのレンズを介さずに直接フィルム面に「投影」(スライ
ドの様に)して撮影するのが「拡大撮影」です。
一番高倍率で、良く写せる方法ですが、使用する望遠鏡の光学系解像度(レンズの良し悪し)がモロ
出てしまうし、特に機構的にしっかりした作りの架台を持った望遠鏡でないと、ブレてしまって
まずまともな写真になりません。
露出は組み合わせる接眼レンズ(要は望遠鏡の倍率)は写す天体により様々ですが、8cm〜10cm程度
の望遠鏡では低倍率での月面はともかく、露出不足との戦いとなる事が多くなります。 私はこ
の問題を解決する方法として、「まず望遠鏡の先端を黒いもので覆い、カメラのシャッターをレ
リーズを使ってB=バルブ・モードで押しているだけオープンの状態にします。数秒以上、望遠鏡
の振動が収まるのを待ってから、筒先で覆っている遮蔽板を瞬間「パッ!パッ!」と動かして数
分の1オーダーの露出を「無振動」で手動操作で行って良い結果を得ています。
(2) 露出時間算出方法
望遠鏡を使って月や惑星の撮影を行なう時の適正露出時間は、まず「合成F」を求めることから始
めます。そもそもカメラの適正「露出時間」と言うのは、選択する「絞り(F)」によって変わり
ます。 今、適正な「露出時間」を知りたいのですから、望遠鏡など使っている光学系の仕組み
全体の絞り([合成F]と呼びます)を求める必要がある訳です。 これがわかれば、撮影したい
天体ごと毎に適正な露出時間は決まってきます。
そもそも、F(絞り、明るさ)とは 対物レンズ口径を焦点距離で割ったものです。
F=対物レンズの「口径」/対物レンズの「焦点距離」
から、「直焦点撮影」の場合は簡単ですね。 望遠鏡のFそのものです。
(例:口径80mm、焦点距離910mmの望遠鏡を使った場合:910mm/80mm=F11.4)
問題は「拡大撮影」の場合です。接眼レンズを使って像を大きくしていますので、実質的な焦点
距離(「合成焦点距離」と呼びます)は大きく伸ばされています。「合成焦点距離」を求めれば
合成F=対物レンズの口径/合成焦点距離で算出できます。
拡大撮影の場合は、接眼レンズで覗いた像をスライドの様にカメラのフィルム面に「投影」する
訳ですから、当然接眼レンズからフィルムまでの距離が長くなれば像も大きく引き伸ばされます。
(拡大されると言う事はそれだけ焦点距離を長くしたのと同じ効果があるわけです)従って、ま
ず拡大率を算出しなければなりません。
拡大率=接眼レンズからフィルムまでの距離/接眼レンズの焦点距離
拡大率が分かれば、合成焦点距離は
合成焦点距離=対物レンズの焦点距離X拡大率
合成焦点距離が分かれば、合成Fは
合成F=対物レンズの「口径」/合成焦点距離
となります。面倒くさい様ですが、自分がいつも使うシステムでそう何通りもある訳ではないで
しょうから、一度算出しておけば済みます。
使用する光学システムのFさえ決まれば、あとは下の表から、撮影する天体によって適正露出時
間を選択して下さい。上の4行の中からは使用するフィルムの感度の行を選択して、その行の中
で使用する光学システムのF(合成F)を選択して下さい。その列にある露出時間(5行目以下)
が撮影する天体ごとの適正露出時間です。
| ISO 50 |
F0.7 |
F1.4 |
F2 |
F2.8 |
F4 |
F5.6 |
F8 |
F11 |
F16 |
F22 |
F32 |
F45 |
F64 |
F90 |
| ISO 100 |
F1.4 |
F2 |
F2.8 |
F4 |
F5.6 |
F8 |
F11 |
F16 |
F22 |
F32 |
F45 |
F64 |
F90 |
F180 |
| ISO 400 |
F2.8 |
F4 |
F5.6 |
F8 |
F11 |
F16 |
F22 |
F32 |
F45 |
F64 |
F90 |
F128 |
F180 |
F256 |
| ISO 800 |
F5.6 |
F8 |
F11 |
F16 |
F22 |
F32 |
F45 |
F64 |
F90 |
F128 |
F180 |
F256 |
F360 |
F512 |
| 太陽 (注) |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
1/8000 |
1/4000 |
1/2000 |
1/1000 |
1/500 |
1/250 |
1/125 |
| 月齢2/28 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
1/8 |
1/4 |
1/2 |
1 |
3 |
7 |
16 |
- |
- |
- |
| 月齢3/27 |
1/500 |
1/250 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
1/8 |
1/4 |
1/2 |
1 |
3 |
7 |
16 |
- |
| 月齢5/25 |
1/1000 |
1/500 |
1/250 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
1/8 |
1/4 |
1/2 |
1 |
3 |
7 |
16 |
| 半月 |
1/2000 |
1/1000 |
1/500 |
1/250 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
1/8 |
1/4 |
1/2 |
1 |
3 |
7 |
| 月齢11/19 |
1/4000 |
1/2000 |
1/1000 |
1/500 |
1/250 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
1/8 |
1/4 |
1/2 |
1 |
3 |
| 満月 |
1/8000 |
1/4000 |
1/2000 |
1/1000 |
1/500 |
1/250 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
1/8 |
1/4 |
1/2 |
1 |
| 水星 |
- |
1/8000 |
1/4000 |
1/2000 |
1/1000 |
1/500 |
1/250 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
1/8 |
1/4 |
1/2 |
| 金星 |
- |
- |
- |
- |
1/8000 |
1/4000 |
1/2000 |
1/1000 |
1/500 |
1/250 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
| 火星 |
1/8000 |
1/4000 |
1/2000 |
1/1000 |
1/500 |
1/250 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
1/8 |
1/4 |
1/2 |
1 |
| 木星 |
1/2000 |
1/1000 |
1/500 |
1/250 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
1/8 |
1/4 |
1/2 |
1 |
3 |
7 |
| 土星 |
1/500 |
1/250 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
1/8 |
1/4 |
1/2 |
1 |
3 |
7 |
16 |
- |
| 天王星 |
1/125 |
1/60 |
1/30 |
1/15 |
1/8 |
1/4 |
1/2 |
1 |
3 |
7 |
16 |
- |
- |
- |
(注)太陽撮影は、ND400フィルター+ND8フィルターを使用
更に、地平線からの高度(天頂が90度)が低い場合は地球の大気層を斜めに横切る度合いが大きく
なり、天体の光度は減衰されますので、その分を補正する事により更に適正な露出時間が得られま
す。上の表で得た露出時間に、下の表で得た露出倍数を掛けて最終的な適正露出時間となります。
| 地平線からの高度 |
露出倍数 |
| 90度 |
1.00倍 |
| 40度 |
1.10倍 |
| 20度 |
1.50倍 |
| 10度 |
2.50倍 |
4.デジタル写真撮影
(1) 冷却CCDによるデジタル写真の特徴
最近、注目を集めているのがこのデジタル撮影です。デジタルと言っても。いわゆるデジカメで撮
影するのではありません。 冷却CCDと言う、冷却(空冷/水冷)システムの付いた超高精度のCCD
(ビデオやデジカメの感光部)を「直焦点撮影」の一眼レフカメラの替わりに取りつけてパソコン
画面で受像する高価なシステムです。CCD部分だけでも数十万画素で数十万円、100万画素を超え
るCCDは百万円以上もします。
それでもこのデジタル撮影システムが人気を博しているのには訳があります。
フィルム写真より数十倍感度が高いので露光時間も短くて良いし、撮影可能な極限等級もフ
ィルム写真の20等星に対し23等星。
ダイナミックレンジ(明るさの階調数)が広く、都心の明るい空や満月の明るい空でも16〜17
等級の天体が撮影可能。 都会の明るい空でも背景の明るい空をキャンセルする事ができる為
結果的に光学システムでは見えない暗い星雲・星団の撮影が可能! 山奥の観測所とのハンデ
ィがそれほど出ない! これは本当に革命的な事です!
撮影された濃度(明るさ)はフィルムの様に非直線的な部分がなく、階調数も多いので測光(写
った天体の光度測定)精度が高い。
撮影時フィルム面の平坦性や、現像処理時のフィルムや印画紙の変形に起因する問題が無い為
位置精度が高い。
撮影した画像ファイルをそのままデジタル画像処理できるので、当初画質を落とさずに画像処
理が可能。
撮影したその場で確認できる。
望遠鏡の遠隔操作と併せ、室内から全自動・観測/撮影が可能。望遠鏡はベランダに置いて、
モータードライブで見たい方向にリモコン操作。 自分はエアコンの効いた別室で目の前のパ
ソコンと望遠鏡のリモコン・スイッチで天体観測が可能! これも本当に革命的な事です!
(2) 撮影の実際
システムの構成
CCDカメラ本体
望遠鏡の接眼部に取り付けます。重さは1Kg位はあるので望遠鏡の接眼部が機械的にしっかりし
ている事、また架台に余力がある事が必要です。
水冷ユニット(水冷方式の場合)
CCDカメラ本体に循環ホースで水を循環させます。
カメラ・コントローラー
CCDカメラ本体の制御ユニットで、小型のステレオアンプ位の大きさがあります。CCDカメラ
本体とはかなり太いケーブルで接続されますので、ケーブルの取り回しには十分気を付け、
望遠鏡のモータードライブや、接眼部に不必要な負荷を与えない様にする必要があります。
ノート・パソコン
カメラ・コントローラーに接続して、全てのセッティング、撮影操作はパソコン上の専用ソフ
トウェアで行います。 撮影した画像はパソコンの画面に表示されますので、必要な画像処理
(後述)を行ってから、ハードディスク等に保存します。 カメラ・コントローラーとの接続は
パラレルポート(プリンターポート)で行うもの、シリアルポート(通信ポート)で行うものなど
様々ですので、適応したパソコンを用意する必要があります。パラレルポートを利用する物の
中には、パラレルポードが双方向通信をサポートしている必要がある物もありますので注意し
ます。
冷却CCD(武藤工業CV-04)を望遠鏡接眼部にセットし
撮影準備中
撮影の準備
あらかじめ十分時間をかけてCCDを冷却させておきます。ほとんどの冷却CCDは、CCDユニット
の裏側に貼り付けたペルチェ素子に通電する事によってCCDを冷却させていますが、(外気温マ
イナス40度程度)あまり急速に冷却すると結露してしまいますので、毎分1度位を目安に徐々に
冷却します。通常は付属のソフトウェアに設定する事により自動的に制御しながら冷却できま
す。
夜になる前にあらかじめ薄明の空に望遠鏡を向けて(筒先にはトレーシング・ペーパーでふた
をしておきます)視野内の明るさを平均化された白色で埋め尽くした様な画像を撮影しておき
ます。この画像はフラットフレームと呼ばれ、後で使います。
更に、シャッターを閉じたまま真っ暗な画像を撮影しておきます。この画像はダークフレーム
と呼ばれ、後で使います。
撮影と画像処理
撮影したい天体を視野内にいれます。光路切替器+接眼レンズを装着していないとCCDに入り
込んでいる視野像をリアルタイムに見ることはできませんが、無い場合はあらかじめ良く調整
しておいたガイドスコープを使って目標天体を導入します。
次にフォーカス合わせを行いますが、ソフトウェアが撮影、データ伝送、表示を次々に連続
してやってくれますので(2〜3秒に一回画像が表示される)、タイミングを掴みながらうまく望
遠鏡のピント合わせ装置を操作してフォーカスを正確に合わせます。
いよいよ本番撮影します。露出時間(武藤工業のCV-04の場合0.008秒〜8388秒)とピンニング
(CCDの撮像素子の結合単位=通常は1、増やすと画素は荒くなるが感度は上がる)を設定して実
行します。撮影した画像はパソコンにすぐに表示されますが、この画像はライトフレームと呼
ばれます。
撮影したライトフレームは超高感度CCDの特性に起因するノイズを大量に含んでおり、露出時
間の長いものでは、一面に星を散りばめた様にノイズが写っていて、そのままでえは全く使い
物になりません。 そこで、あらかじめ撮影しておいたダークフレームとフラットフレームの
出番です。
ダークフレームは(本番と同じ露出時間で)シャッターを閉じて撮影した画像なので、本番撮
影のライトフレームに含まれているCCD自体のノイズ成分だけが写っています。
フラットフレーム画像は、明るい均一な光を撮影した画像なので望遠鏡の光学系のムラや
CCDカメラのシャッターの開口ムラ、更にCCDに付着しているゴミなどが白地に浮き上がって
(ムラとなって)写っています。
付属のソフトウェアの機能を使って、まずライトフレームからダークフレームを「引き算」
するとCCDのノイズが完璧に除去されます。
フラットフレームもダークフレーム(フラットフレームと同じ露出時間で撮影した)を引き算
してやり、CCDノイズを除去します。
最後にCCDノイズを除去されたライトフレームを同じくCCDノイズを除去されたフラットフレ
ームで割り算をしてあげると、光学系のムラやCCDに付着したゴミが取り除かれた完全な写真
が出来あがります。
完成した写真は、撮影後必要に応じ画像処理ソフト(「Stella Image 2」等)を使って更に最適
な写真となる様に修正・補正処理をします。 こうして、銀塩フィルム写真を上回る感度やダイ
ナミックレンジ、直線性、平面性を持った夢のような写真が自分の手だけでその場で完成してし
まうのです。
カラー写真の撮影
冷却CCDにはモノクロとカラーと両方ありますが、カラーCCDは極めて高価であるばかりでなく
色の表現力、感度共にかならずしも優位ではありません。 そこで一般的に行われているのが
モノクロCCDを使った「三色分解撮影法」です。 赤・緑・青のフィルターを用意し、それぞれ
のフィルター毎にで同じ被写体を合計3枚撮影します。(光の三原色毎のモノクロ写真を撮る訳
です) 付属のソフトウェアで3枚の写真を色毎に合成すると、美しいカラー写真となります。
冷却CCD(武藤工業CV-04)と接眼部の間にセットした
電動フィルター・ターレット(武藤工業FC-06)。
この円盤の中に三色分解撮影用のR(赤)、G(緑)、
B(青)の各色フィルターを内蔵。 (最大6枚内蔵可)

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