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             外国語ing My Way
        情報マガジン NO.000028  2004.12.27配信
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「外国語ing My Way」マルチリンガル習得へのヒント・シリーズ(14)
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第14回 「会話のノリ」が切り開く言語固有の発想や表現への道

野球の試合を見ていたとします。 味方がここぞと言うところで見事なヒット
を放ちました。 「良くやった!」と思わず叫ぶことでしょう。 例えばこの
ケースで、英語だったらなんて言うんでしょうか? 「Did it well!」と訳
す人はいないにしても、「Well-done!」と訳したとします。 周りの人に意味
はわかってもらえるでしょう。 それ自体は正しい英語だからです。 でも、
恐らく私が想像するに、ネイティヴの方がこのような流れで興奮して声を出す
としたら、例えば「Way to go!」と言う様な表現をするのではないかと思いま
す。 もちろんこれは「That's the way to go!」(それがするべきことだ。
それでいいのだ。それだ!)の短縮形です。

このように同じシチュエーションでも、言葉が異なると表現自体が異なって来
る事がたくさんあります。 むしろ特に口語の世界では、ある一定のシチュエ
ーションで使われる表現の厳密な対比を行った場合、直訳すると全く異なった
意味の表現が使われるケースの方が多いと言っても過言ではないのです。 こ
の事は外国語を学ぶ上で大変重要な事を示唆しています。 すなわち、決して
「訳してはいけない」と言う事です。 

そう言うと混乱してしまう方もおられるかもしれません。 巷にあふれる参考
書や演習問題集で、「以下の日本語を外国語に訳しなさい」と言う演習が溢れ
実際にそう言った作業を通して我々は勉強をして来たからです。

もちろん、それはそれで必要な学習であるのです。 特に論理的な話をする場
合、例えば議論をする場合、或いは新聞や書籍などで論理的な文章に触れる場
合は、逆にそのような厳密な翻訳ができないと話しになりません。 論理的に
正しい翻訳が出来なかったら、ひとつの考えを正確に相手に伝える事はできま
せん。 知的なコミュニケーションを図るためには、正しく「訳す」作業はま
ず大前提なのです。

しかしひとたび口語の世界になると話は別です。 それは多かれ少なかれ「感
情表現」の世界であるからです。 そして時には議論を行う場合でも、かなり
論理的な話をする場合でも、訳しては選択する事のない表現が使われる事もた
くさんあります。 それはその議論が「口頭」で行われているからです。 更
に深く考えて行くと、書かれた論理文の中でも、直訳すると極めて不自然な日
本語訳になってしまう表現はたくさんあります。 つまりその言語独特の表現
方法がとられているわけで、それは決して日本語を「訳す」作業からは生まれ
て来る事がないものなのです。


こうやって考えてみると、外国語はまず正しい翻訳作業ができる様に学習はす
るけれども、それは決して最終形ではないと言う事に気がつきます。 その国
に行ってその言葉の環境の中に浸りきって学習をして行くのならともかく、日
本にいて教室で学習をして行くとなると、まずは日本語を通して学んで行くの
は止むを得ないことです。 しかし、そのような「直訳」を学ぶのは、あくま
でも語学学習の流れの中で、「文法」を身に着ける為の一段階に於ける演習で
あると考えた方が良いかもしれません。 とりあえず一通り基礎的な表現を学
んだら、あまり訳す事を意識しないで勉強して行く事が大事ではないかと思い
ます。

外国語とは決して自分の母国語からの翻訳で表現されるものではないのです。
そもそもひとつの文化圏(国)にはその国の固有の物事の感じ方考え方があっ
て、その国の言葉はそういったものがベースになっている固有の表現で作られ
ているのです。 そしてそれらはまた相互に影響し合っているのです。 従っ
て、外国語を学ぶと言う事は、そもそも言葉を学ぶ以前に、あるいは学ぶ事を
通して、「その国の物の感じ方、考え方、表し方を学ぶと言う事」なのです。
この事を明快に理解していれば、おのずから学習に対する姿勢や取り組み方が
変わって来るのではないかと思います。

では、どの様にしたら「その国の物の感じ方、考え方、表し方」を学ぶ事がで
きるのでしょうか。 

まず会話文をたくさん暗記することから始めたら良いと思います。 ラジオ講
座のテキストでも良いし、会話の参考書でも良いのです。 生きた会話文にた
くさん触れ、できる限りたくさん暗記するのです。 そしてその時には、付録
のCDを最大限に活用しなければいけません。 本来、お手本のCDは正しい
発音を身に着ける目的で活用するのですが、この場合はむしろ「会話の流れの
中での感情表現の起伏を掴む為」に必要なのです。 ある表現があった時に、
「どの様な会話の流れで相手のどんな発言を受けてどの様な雰囲気で応えた時
の表現であるか、そしてそれはどの様な勢いと盛り上がりで言い放つのか」、
と言ったような事がとても大事なのです。 それを丸ごと頭の中に叩き込むの
です。 そしていつか自分が同じようなシチュエーションに置かれた時に条件
反射のように自然に同じ「ノリ」で口から飛び出して来るようにする事が大事
なのです。 

そう言う意味では教材とする参考書は、会話に使われる表現を断片的に羅列し
たものではなく、シーン別に複数の登場人物が会話のキャッチボールを行って
いる物が有効です。 会話表現を羅列した参考書では、知識として覚える事は
できても、適切なシーンで適切な使い方ができるようにならないからです。 
ラジオやテレビの会話主体の語学講座のテキストなどは会話の1シーンを取り
扱っていて、取り組みやすい教材と言えます。 ボリュームもあまり多くない
ので、毎月毎月1ヵ月分を丸暗記する様にして行ったら良いと思います。 こ
のような会話のキャッチボールでの表現を学ぼうとする時には「丸暗記」に勝
る学習方法はないと言って良いと思います。 

さらに教材を選べるならCDのお手本の話すスピードが速いものを選びます。
ひとつひとつの発音を正確に学ぶのが第一義的な目的ではないからです。 ひ
とくちに言って「ノリ」を身に着けるのがポイントなのです。 外国語の学習
で、ともするとこの「ノリ」と言う要素は採り上げられていないようですが、
私は極めて重要な要素だと思っています。

会話に相手を引き込めるのも、実はこの「ノリ」が重要な役割を果たしていま
す。 もし、皆さんが外国人と日本語でお話をされる機会を得たとして、その
時に相手がかなり日本語を理解し話せたとしても、相手の受け答えが慣用的で
なくなんとなくロボット相手に話しているようなぎこちなさがあったとしたら
話もはずまないし、難しい日本語は積極的に避けるなど、意識した話し方にな
ってしまうのではないでしょうか。 しかし、もし普通の日本人と同じような
テンポで機微を心得た受け答えをされたとしたら、いつの間にか相手の会話に
熱中してしまう事でしょう。 実際の会話と言うシチュエーションにおいては
この「あうんの呼吸」の「ノリ」がとても大事で、予想もしない(慣用的でな
い)応答をされると、途端に会話はその自由度を失ってしまうのです。

さて、この「ノリ」は会話を生きたものにしてくれますが、実はこの「ノリ」
を身につける事は自分自身に多少なりとも変化を及ぼす事になります。 その
外国語を話す時の自分のスタンスなり構えなりを変えてしまうのです。 文字
通り、ゴルフで球を打つ時のスタンスや構えに通じるものがあります。 ゴル
フのショットを打つときの足の置き方、クラブの構え方、姿勢など、ショット
と言う動作に入る前の準備の体勢です。 ゴルフでは例え同じ様なスイングを
試みても、最初のスタンスや構え方が異なっていると、実際に打たれた球の軌
道は大きく異なってしまいます。 疲れてスタンスや構え方がおかしくなって
くるとますます球は意図せぬ軌道を描いて行くようになります。 一方で一流
のプレイヤーは積極的にスタンスを調整して意識的に球の軌道をコントロール
する事もあります。

私は、その外国語の発想をすると言う事の第一歩は、この正しいスタンスと構
え方を身に付ける事ではないかと思っています。 明るい性格の人の考え方や
反応や表現方法を真似ようと思ったら、まず自分も明るく振舞わなくてはいけ
ません。 暗い落ち込んだ状態でそのような人の真似をする事はかなり難しい
事であるのは想像すればおわかり頂けると思います。

そう言えば同じ日本人でも、人によって「ノリ」には随分差があるものです。
そしてその「ノリ」の差は、結構人柄を表している事が多いものです。 ある
人の日本語の表現を真似しようと思ったら、やはり声帯模写であろうとなんで
あろうと、まずその人の雰囲気や表情まで模倣しながら真似するのではないで
しょうか。 その顔でその表情でその性格とノリだから、そんな表現をするの
ではないでしょうか。(笑) ですから、逆にそんな表現を目指しているので
あれば、当然そんなノリから真似しなければいけないのです。

その外国語特有の受け答えのノリを掴む事とその外国語特有の発想や表現方法
を身に着ける事は表裏一体を成しています。 ある程度早い速度で再現されて
いる口語対話シーンのお手本CDによって、そのノリと表現を学び取る事が大
事な第一歩となる事でしょう。

もちろん、これは入り口です。 それだけではその外国語特有の発想や表現方
法を完全に身に着ける事は到底できません。 しかし、こう言った基本的スタ
ンスと構え方の中で少しずつ複雑な表現方法を学んで行くうちにその目的に少
しずつ近づいて行く事ができるのです。

対話場面の多い小説や映画などのシナリオを読む事は、そう言った表現方法を
学んで行く上で効果の高い方法であると思います。 そしてなによりも、ネイ
ティヴとの会話の実践の積み重ねがそれに磨きを掛けて行ってくれる事でしょ
う。

(第15回に続く)


それでは皆さん、良い年をお迎えください!
また新年にお目にかかりましょう。

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